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スウェーデンがキャッシュレス先進国となった3つの理由とは

コラム
記事掲載日:2021年12月20日
最終更新日:2021年12月30日

スウェーデンは、世界でも注目されているキャッシュレス先進国の1つで「現金が消えた国」とも言われています。

ここまでキャッシュレス化が進んだ背景には、どのような取り組みがあったのでしょうか。

本記事では、スウェーデンのキャッシュレス事情をまとめました。

<本記事でわかること>
  • スウェーデンのキャッシュレス事情
  • スウェーデンでキャッシュレスが進んだ理由
  • スウェーデンで使われているキャッシュレス決済の種類

スウェーデンのキャッシュレスの現状を網羅的にまとめたので、ぜひご一読ください。

目次

スウェーデンのキャッシュレス事情

スウェーデンのキャッシュレス事情

まずはスウェーデンにおいてどれだけキャッシュレスが浸透しているのかを紹介します。

スウェーデンの現金流通量はGDPの1.7%

スウェーデンのキャッシュレス推進率は具体的にどの程度なのでしょうか。

以下のグラフは、日本銀行が分析した資料「BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」における、世界各国の現金の流通残高とGDP比率についてまとめたものです。

各グラフは、国内総生産における現金流通残高の割合を示しており、グラフの長さと現金の使用率が比例しています。

現金流通残高の対名目GDP比率と額面金額別の内訳

出典:BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴

グラフに記載されている通り、スウェーデンの現金流通残高の対名目GDP比率はわずか1.7%です。つまり、98.3%がキャッシュレスで支払われていることになります。

一方で日本の数値はスウェーデンの約11倍となっており、スウェーデンと比較すると、キャッシュレス化が進んでいるとは言えません。

スウェーデンから現金取扱店がなくなる?

スウェーデンでは現金を取り扱う機会が減少しており、レストランやショッピングといったほとんどの場所でキャッシュレス決済が可能です。

そのうえ、一部の店舗ではキャッシュレスオンリーとなっており、現金での支払いができません。

また、ほとんどの金融機関でも現金が取り扱えず、ATMの数も減少傾向にあります。

実際、財務省の「第7章 スウェーデンの動向」内に掲載されている「直近の支払いにおいて現金を使用した人の割合」を見ると、2010年は39%であったのに対し、2018年は13%にも減少しています。

直近の支払いにおいて現金を使用した人の割合

出典:財務省「第7章 スウェーデンの動向

上記のグラフから、現金の使用が完全になくなったわけではないものの、ほとんどの人がキャッシュレス決済を利用していることがわかります。

スウェーデンでキャッシュレスが進んだ3つの理由

スウェーデンでキャッシュレスが進んだ3つの理由

スウェーデンでキャッシュレスが進んだ理由は、3つあります。

<スウェーデンでキャッシュレスが進んだ3つの理由>
  1. 治安向上のため
  2. 政策としてキャッシュレスが推進されたため
  3. 決済アプリSwishが開発されたため

順番に紹介します。

理由①治安向上のため

1つ目の理由は、治安向上のためです。

現金を持ち歩いたり、取り扱ったりしていると、どうしても強盗やひったくりなどの犯罪行為が発生してしまいます。

しかし、キャッシュレス決済をメインにすれば現金を持ち歩く必要がないため、ひったくりや強盗の被害にあう恐れは低くなります。

下記の記事では、スウェーデンにて2008年には110件あった強盗発生数が、2015年には7件に減少していると報告しています。

>>JTB総合研究所「強盗発生率 -93.6%

実際に犯罪発生件数が減少しているとのデータから、キャッシュレス化推進が治安向上に役立っていることがわかります。

理由②政策としてキャッシュレスが推進されたため

2つ目の理由は、国や中央銀行をあげてキャッシュレスが推進されたためです。

店舗で現金を使わなくてもいいように環境を整備し、さらに現金を取り扱わないことを許可しました。

個人経営のような小規模店舗では現金が主流である日本とは異なり、スウェーデンでは小規模店舗でもクレジットカードやデビットカードが使用できる場合がほとんどです。

また政策により、公共機関の切符販売機では現金がほぼ使えず、キャッシュレスのみの支払いとなっています。

公共機関もキャッシュレス払いが主流と聞くと、キャッシュレスの導入率の高さが伺えます。

理由③決済アプリSwishが開発されたため

3つ目は、決済アプリSwishが開発されたためです。

決済アプリSwishは、2012年にスウェーデン国立銀行と大手銀行6行が共同で開発したスマートフォン決済アプリです。

パーソナルナンバー(日本のマイナンバーと同様)と、銀行口座を紐付けた決済認証システムを利用しています。

買い物をするときには、お店の電話番号と金額を入力して簡単に決済可能です。

また、ほとんどの銀行口座間で利用でき、個人間の送金にも対応しています。

経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」によると、Swishの利用者は毎年約100万人ずつ増加しており、2017年10月のSwish利用者数は597万人となっています。

スウェーデンの総人口は約1,000万人なので、人口の約60%が利用している計算です。

人口の6割が同じキャッシュレスサービスを利用していると考えると、その普及率の高さを感じられます。

また、財務省「第7章 スウェーデンの動向」によれば、2018年のスウェーデンでは、20代から40代半ばの人のSwish利用率が約8割を超えていることがわかっています。

過去一か月の決済の中で使用した支払手段(2018年・年齢階級別)

出典:財務省「第7章 スウェーデンの動向

スウェーデンの国民にとって、Swishはすでに生活の一部になっていると言えるでしょう。

スウェーデンで使われている4種類のキャッシュレス決済

スウェーデンで使われている4種類のキャッシュレス決済

スウェーデンで使われているキャッシュレス決済は、おもに下記の4種類です。

<スウェーデンで使われているキャッシュレス決済>
  1. スマートフォン決済アプリ
  2. デビットカード
  3. クレジットカード
  4. マイクロチップ

順番に解説します。

種類①スマートフォン決済アプリ

スウェーデンのキャッシュレス市場で、活気付いているのがスマートフォン決済アプリです。

日本でもQRコード決済が急成長していますが、スウェーデンではSwish一強の状態が続いています。

日本のQRコード決済と似ているものの、Swishではスマートフォンにお店の電話番号と金額を入力して支払いを済ませるため、支払い方法が異なっています。

先程の見出しで紹介したグラフからもわかる通り、主に若い世代の人を中心に利用者が増加している決済手段です。

種類②デビットカード

デビットカードは、スウェーデンでもっとも使われているキャッシュレス決済です。

過去一か月の決済の中で使用した支払手段(年別)

出典:財務省「第7章 スウェーデンの動向

「第7章 スウェーデンの動向」では、過去3回の調査に渡り、デビットカードの使用率は90%を超える高い結果が出ています。

また、年齢別の調査では、65〜84歳の人でも87.8%の使用率を誇っています。

過去一か月の決済の中で使用した支払手段(2018年・年齢階級別)

出典:財務省「第7章 スウェーデンの動向

決済と同時に銀行口座から引き落とされる簡単さが、高齢者世代にも親しまれている理由と考えられます。

種類③クレジットカード

デビットカードに比べると使用率は下がりますが、スウェーデンではクレジットカードも利用されています。

日本と異なる点は、ICチップ付きカードのPIN入力が主流な点です。

PIN入力とは、クレジットカードをカードリーダーに差し込んで、4桁の暗証番号を入力するセキュリティ方式のことです。

日本ではまだ主流であるサインでの支払いは、スウェーデンではほぼなくなっており、一部の店舗では断られる場合もあります。

また近年のスウェーデンではPIN入力方式も減少傾向にあり、端末にタッチするだけで決済できるコンタクトレス決済に移行しつつあります。

種類④マイクロチップ

キャッシュレス大国のスウェーデンで実用化されているのが、マイクロチップ決済です。

米粒ほどの大きさのマイクロチップに、個人情報やクレジットカードといった情報が記録されていて、手の皮膚に埋め込みます。

スウェーデンでは2015年から導入されており、現在は数千人の国民がすでにマイクロチップ決済を利用しています。

決済方法は、読み取り端末に手をかざすだけと手軽で、カードやスマートフォンを持ち歩く必要もありません。

また、マイクロチップはリーダー機器にのみ反応するため、スマートフォンやカードよりも情報が盗まれにくいことが特徴です。

マイクロチップで支払いできる場は多く、おもに下記の場面で活躍しています。

<マイクロチップができること>
  • 自動販売機
  • 電車の切符の代わり
  • 社員証の代わり

現在もマイクロチップの埋め込みは進んでおり、2021年現在では、新型コロナウイルスワクチンの接種証明としての活用も検討されています。

まとめ:スウェーデンは最新技術を持つキャッシュレス先進国

スウェーデンは最新技術を持つキャッシュレス先進国

スウェーデンは、「現金が消えた国」と言われるほどのキャッシュレス大国です。

98.3%の支払いがキャッシュレスで実施されており、国民の多くがデビットカードを用いて決済しています。

また、スマートフォン決済アプリのSwishが開発され、人口の約60%が使用していると発表されました。

最新技術のマイクロチップ決済も浸透しており、すでに実用化されています。

今後どのような技術がキャッシュレスに導入されるのか、スウェーデンの動きから目が離せません。

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