キャッシュレスとDXを考えるWebマガジン

中国のキャッシュレス普及率と現状抱える2つのデメリット

コラム
記事掲載日:2021年11月13日
最終更新日:2021年11月29日

「中国のキャッシュレス事情が知りたい」

「中国ではどんなキャッシュレス決済方法が主流なの?」

このようにお考えではありませんか。

中国は、世界でもトップクラスのキャッシュレス先進国です。

その導入率は8割近く、「キャッシュレス決済なしでは生活できない国」とも言えるほどです。

本記事は、そのような中国のキャッシュレス事情についてまとめました。

<本記事でわかること>
  • 中国で利用率の高いキャッシュレス決済方法
  • 中国でキャッシュレスが普及した理由
  • 特にQRコード決済が普及した理由
  • 中国のキャッシュレス決済におけるデメリット

中国がどのようにキャッシュレス先進国となったのか知りたいのであれば、ぜひ最後までお読みください。

目次

中国のキャッシュレス決済比率は7割超

中国のキャッシュレス決済比率は7割超

中国は、世界でもトップクラスのキャッシュレス先進国です。

⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会の「キャッシュレス・ロードマップ2021」によれば、中国のキャッシュレス決済比率は77.3%です。

キャッシュレス・ロードマップ2021

出典:⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ2021」

韓国のように9割は超えないものの、上記のグラフでは2位にランクインしています。

中国は「現金払いのみでは暮らせない社会」になったと言われ、さまざまな場所でキャッシュレスによるお金の動きが見られます。

では「現金払いでは暮らせない世界」とは、具体的にどのような世界なのでしょうか。

わかりやすい例で言えば、友人・知人同士での割り勘が挙げられます。

日本では飲み会の会計をするときに、幹事に現金を渡すことが多いのではないでしょうか。

中国でも同様の「割り勘」があるものの、その方法は現金ではなく、QRコード決済の送金システムによって行われます。

現金を手渡ししなくても、送金システムを使って相手のアカウントにお金を支払えるのです。

また中国では、募金もQRコードを掲示して、キャッシュレスで対応しています。

キャッシュレス化が進んだことによる中国社会の変化

ほかにもキャッシュレス化が進んだことで、中国社会は下記のような状態になりました。

<中国のキャッシュレス事情>
  • お祝い金に至るまで、ほぼすべてがスマホ決済を使用
  • 現金を持つ必要がないので、ATMの利用者数が減少
  • 硬貨の流通量や紙幣の破損が原因で自販機が少なかったが、モバイル決済対応の自販機が急増

中国では、もはやキャッシュレス決済なしでは生活しづらいほど、多くの人に影響を与えています。

中国で利用率の高いキャッシュレスはQRコード決済

中国で利用率の高いキャッシュレスはQRコード決済

ただキャッシュレス決済には、クレジットカードなど様々な手段が存在するため、「中国では何が人気なのかな」と感じている方も多いかもしれません。

中国で利用率の高いキャッシュレスは、QRコード決済です。

以下の画像は、銀聯国際日本支社による「現金とキャッシュレス決済に関する調査」です。

中国のランキングに注目してみると、1位はスマホ決済(QRコード決済)で保有率は86%と高水準です。

現金とキャッシュレス決済に関する調査

出典:銀聯国際日本支社「現金とキャッシュレス決済に関する調査」

日本や韓国がクレジットカード主流なのに対し、大きく異なる結果となりました。それほどスマホ決済が人気だということです。

また中国のモバイル決済利用者数の推移からも、QRコード決済を利用する人の多さを確認できます。

また、中国のモバイル決済利用者数は、年々増加しています。

第44回中国インターネット発展状況統計報告

出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)図1:中国のモバイル決済利用者数の推移

2016年から2019年の3年で、利用者はおよそ1.5倍に増加しています。

このように中国ではQRコード決済が普及しており、中でも下記の2つが主流です。

<中国で主流のQRコード決済>
  • Alipay
  • WeChat Pay

それぞれの特徴を簡単に見てみましょう。

Alipay

Alipayは、アリババグループが運営するQRコード決済です。

中国だけではなく東アジアを中心にユーザーが多く、利用者数は12億人を突破しました。

日本でも加盟店が増加しており、全国的なチェーン店では利用できる店舗が多く見られます。

オンライン決済と実店舗の決済に対応しているので、場所を問わず使える利便性が普及に役立ったと言えます。

WeChat Pay

WeChat Payは、テンセント社が運営するQRコード決済です。

実際は単独のアプリではなく、WeChatと呼ばれるメッセンジャーアプリに搭載された機能のひとつです。

日本におけるLINEとLINE Payのような関係と言えます。

中国ではAlipayに次ぐ2番手のQRコード決済ですが、もともとWeChatを利用していたユーザーも多く、その登録者数は11億人以上を超えると言われています。

世界中で加盟店が増加しており、日本でも利用できる店舗が複数見られるようになりました。

【消費者側】中国でQRコード決済が普及した3つの理由

【消費者側】中国でQRコード決済が普及した3つの理由

では、なぜ中国ではこれほどまでにQRコード決済が普及したのでしょうか。

消費者側の観点に注目すると、中国でQRコード決済が普及した理由は主に3つあります。

<消費者側にQRコード決済が普及した3つの理由>
  1. 現金を持ち歩く必要がないから
  2. キャンペーンや特典があるから
  3. 政府がプロジェクトを推進したから

順番に見ていきましょう。

理由①現金を持ち歩く必要がないから

QRコード決済が普及した大きな理由は、現金を持ち歩く必要がないためです。

中国の最大紙幣は100元札(約1,500円)なので、大金を持ち歩くのは不便でした。

日本では1万円を支払うのに1万円札が1枚あれば済みますが、中国では約9枚もお札を用意する必要があります。

たとえば、単価が高い家電製品を買うとなれば、紙幣を数十枚も持ち歩かなくてはなりません。

もちろん日本でも現金を持ち歩く必要がない点は、キャッシュレスのメリットとして挙げられますが、中国のほうがより顕著と言えます。

財布の中でお札がかさばって大変なので、スマホひとつで買い物できるのであれば、普及は必然だったと言えます。

理由②キャンペーンや特典があるから

中国のQRコード決済は、最大20%ポイント還元といったキャンペーンを積極的に実施しています。

ポイント還元とは、その名の通り決済分の数%をポイントとしてキャッシュバックするキャンペーンのことです。

クレジットカードでもポイントは貯まりますが、20%ものポイントがもらえることはほぼありません。

現金やクレジットカードで購入するよりお得になるので、QRコード決済が普及したと言えます。

日本でもPayPayが同じようなキャンペーンを実施しているので、親近感を覚える人もいるのではないでしょうか。

理由③政府がプロジェクトを推進したから

中国政府は、2015年に「インターネットプラス行動計画」を発表しました。

インターネットプラス行動計画とは、医療や物流・金融のようなあらゆる産業とインターネットを結びつけることを掲げて、キャッシュレス決済の普及を推進する計画のことです。

金融業界とインターネットによる技術革新は、中国の生活に劇的な変化を与えました。

そのひとつがQRコード決済で、今後もさまざまなイノベーションが期待されています。

【事業者側】中国でQRコード決済が普及した2つの理由

【事業者側】中国でQRコード決済が普及した2つの理由

一方事業者側の観点に注目すると、中国でQRコード決済が普及した理由は2つあります。

<事業者側にQRコード決済が普及した2つの理由>
  1. 設備投資が不要で導入しやすいから
  2. 決済手数料がかからないから

それぞれを簡単に見てみましょう。

理由①設備投資が不要で導入しやすいから

1つ目の理由は、設備投資が不要で導入しやすいためです。

中国のQRコードは専用端末がなくても利用できるため、導入のハードルが低いと言えます。

日本のQRコード決済では、ほとんどの場合、店舗側が専用端末を購入する必要があります。

たとえば日本の店舗では、POSレジのバーコードリーダーで、スマホに表示されたバーコードを読み取るのが一般的です。

一方で中国のQRコード決済は、消費者がQRコードを読み取るシーンも多くあります。

屋台や市場などに貼り付けてあるQRコードをスキャンするだけで支払えるので、事業者が専用機器を買う必要がありません。

QRコードを印刷して貼り付けるだけなので、誰でも簡単に導入できる点が普及を手助けしたと言えます。

理由②決済手数料がかからないから

2つ目の理由は、決済手数料がかからないためです。

AlipayとWeChat Payは、決済手数料がかかりません。

日本のキャッシュレス決済は基本的に決済手数料が発生するので、店舗からキャッシュレス事業者へお金を支払う必要があります。

たとえばPayPayでは、2%程度の決済手数料が発生します。

しかし、AlipayとWeChat Payは決済手数料という手段をとらず、収集したビッグデータを活用して利益を得るビジネスモデルを選びました。

収集したビッグデータの活用は、利用者数が多いため導入できるビジネスモデルです。

結果として店舗側はほとんどリスクがないため、導入が進んだと言えます。

中国のキャッシュレス決済におけるデメリット

中国のキャッシュレス決済におけるデメリット

ただQRコード決済は中国で普及している一方、いくつかのデメリットも存在します。

<QRコード決済の2つのデメリット>
  1. セキュリティ対策が必要
  2. スマホを持っていない場合は支払いができない

順番に見てみましょう。

デメリット①セキュリティ対策が必要

QRコード決済では、セキュリティ対策が重要となります

中国では以前、消費者のスマホにウイルスを感染させて、銀行口座からお金を盗む事件が発生しました。

また、店舗に設置されているQRコードの上に、自作のQRコードを貼り付けた事件も存在します。

消費者が上から貼り付けられたQRコードを読み取ると、QRコードを自作した人の銀行口座に入金される仕組みです。

店舗側はまさかQRコードが貼り替えられているとは思わないため、店舗側・消費者共に、発見が遅れてしまいました。

セキュリティ対策のためには、紙に印刷されたQRコードの使用を避けたり、必ずリンクアドレスをチェックしてから支払いを行ったりなどの対応を求められます。

消費者だけではなく事業者もセキュリティの感度を上げて、万全の対策をしていく必要があります。

デメリット②スマホを持っていない場合は支払いができない

中国はQRコード決済が主流なので、スマホがないと買い物できないという事態が起こりかねません。

「現金払いのみでは暮らせない社会」では、スマホが使えないと満足に生活できないと言い換えられます。

スマホが苦手な高齢者やスマホを持てない貧困層には、便利とは言いづらい社会です。

システムのさらなる簡略化や、格差の是正が重要となります。

まとめ:中国は韓国に次ぐキャッシュレス先進国

中国は韓国に次ぐキャッシュレス先進国

中国は韓国に次ぐキャッシュレス先進国で、決済比率は7割を超えます。

利用率はQRコード決済がもっとも高く、主流のAlipayとWeChat Payを含めて86%の高水準に達しました。

手数料がかからない点や導入のしやすさから、導入する店舗は増えており、今後も利用者は増加すると言われています。

今後どのような動きを見せるのか、中国のキャッシュレス事情に注目したいところです。

キャッシュレスとDXに関する
最新の情報をお届けするメディア
他のカテゴリーの記事を見る